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「あら、殿はこの髪がお好きでしたのね」
口角が僅かにあがった。
「ああ。お前は美しいな」
アゲハの声が聞こえているのかいないのか、男は愛で続ける。
幾分かたっただろう。
「殿、酒などいかがです?」
アゲハのそばには小さな子供が居る。
「蝶か?」
「そうです。蝶が酒を持って参りました」
少し考える素振りを見せるが、蝶がたどたどしい足取りで男の元へ酒を持っていく姿に心奪われたのだろう。まだ美しいというよりかかわいらしい年頃の蝶は、お猪口をアゲハにも渡すと酒をついだ。
「ありがとう、蝶や」
優しく頭をなでると蝶は太陽のように笑う。
男はアゲハの髪を手放し、酒を飲んで顔を赤らめた。
アゲハも蝶もこぞって飲ませ、男は朦朧としてきたのだろう。
「さぁて、いいわ、蝶。戻っていなさい」
うなずく蝶は、先ほどの足取りなど感じさせないほど洗練されていた。
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